憲法について

憲法は、国の最高法規、価値判断の基準。個人の尊厳を尊重する。これが、現在の憲法の価値判断です。なぜならそれは、戦争の対極にあるから。もう戦争を起こさないために…

憲法は国民ではなく、国家を縛るもの。今回の自民党改憲では、憲法の目的が真逆。

改憲案:日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここにこの憲法を制定する。つまり個人よりも国家が優先されるということ。

基本的人権とは、自由権、社会権、平等権、参政権、受益権の5つがありますが、この人権は無制限に行使できず、「公共の福祉」によって制限されるとあります。つまり、他の人の人権とぶつかったら、多くの人の人権や弱い立場の人の人権を尊重します。それが改憲では人権の制限が「公益及び、公の秩序」となっています。

 

自民党改憲案 第3章12条

国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及公の秩序に反してはならない。

(表現の自由)自民党改憲案 第3章 第21条

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
前項の規定にもかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的に結社することは、認められない。

公益や秩序に反しているかは誰が決める?

国防軍

九条の二項「戦力不保持・交戦権否認」

この下にある今の自衛隊と自民党改正憲法に明記される国防軍とは、まったく別物です。

第二章 戦争の放棄という標題が安全保障に。

自民党改正憲法法案

第二章 安全保障 第九条の二 国防軍

国防軍 国際的に協調して行われる活動および公の秩序を維持国防軍に審判所を置く

緊急事態条項が憲法に新たに登場します。

憲法改正 両院の発議要件を3分の2から2分の1に緩和。

 

戦後の日本国民は、「恒久平和のための戦争」あるいは、「自衛のための戦争」という政府の言い訳や嘘を身に染みて知りました。戦後世代が少なくなる中、これから日本がどうなるの??

戦争は、教育から。言論の自由が狭められていく。上の人の言うことを聞いてさえすれば、自分は安全。まさかあれだけの戦争体験をしたんだから、戦争しよう、戦争できる国にはならないでしょう?

本当でしょうか?あなたはどう思いますか?

 

日本国憲法前文

 自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の禍が起こる事のないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣伝する。われらの安全と生存を保持し、平和のうちに生存する権利を有する。

 改憲案では、条文が大きく書き換えられ、削られました。そして天皇が前文に出てきます。国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに憲法を制定する。

 現憲法では、政府の行為によって再び戦争の戦禍がおこることのないようにとはっきり書いてありますが、改正案では政府の行為によるという言葉が削除。国民主権とは書いてありますが、ことさら天皇を戴く国家とセットでいう意味はないか。現憲法明記されていた平和のうちに生存する権利も削除されています。憲法の目的が大きく変容しています。

 

第二章 戦争の放棄「戦争の放棄、戦力及び交戦権の容認」

第九条 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 改正案では、放棄するから、用いないとなり、前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではないとわざわざ明記されます。そして第九条の二が付け加えられ、国防軍の創設が出てきます。法律の規定に基づいて、武力の行使は可能である。集団安全保障における制裁行動についても可能であるとなっています。

そして、第九章 緊急事態の章が創設され、第九十八条、第九十九条 内閣総理大臣が緊急事態宣言をすると、国民はその指示に従わなければならない、とされています。

 

第三章 「自由、権利の保持の乱用の禁止」

第二十一条 これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責務を負う。改正憲法では、福祉という言葉ではなく、公益及び公の秩序に反してはならないとなっています。福祉というのは、たとえば自由だからと社長が社員に労働を強制することは福祉に反するという意味です。改正憲法は個人の自由、権利より、公の秩序が優先するという全く真逆の内容です。現憲法は、そもそも権力が暴走し全体主義、戦争が起きないように権力の足かせとしてできたもので、国民の権利の足かせではありません。真逆なのです。

 

第三章 第十三条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重されなければならない。

改正憲法 第十三条 すべて国民は、人として尊重される。生命、自由、幸福追求に対する国民に権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

 

この違いがわかりますか。改正憲法では「個人」という言葉をさりげなく「人」に変えています。また前回と同じく、国民の権利の制限を公の秩序に反しない限りと強者や政権をでなく国民を縛る憲法に作り替えようとしています。全体主義の台頭です。

文責 宍戸幸子